東日本大震災で岩手県釜石市の3000人に及ぶ小学生の99.8%が生き延び「釜石の奇跡」と注目をあつめました。
2004年から市内の学校で防災教育の指導にあたった一人、防災学者 片田敏孝さんの体験を紹介します。
児童に対し「地震がおきたら君達は何処に逃げる」と尋ねると、一人の少年が答えました。
「逃げなくてもいいんだ、立派な堤防ができたから、お父さんも、おじいちゃんも逃げないよ」
その言葉に衝撃をうけたそうです。
子供達は大人の背中を見て育ち、津波が来ても逃げない子供に育っている。
防災教育で一番大切な事は、子供たちに過去の津波被害を理解させた上で「僕は逃げる」と云う気持ちをしっかり持たせる事の大切さを痛感させられたそうです。
子供達に再度質問するとたいていの子供は「お母さんが帰って来るまで待つ」と答えました。
「君がお母さんを待つのならお母さんは絶対君を迎えに来る、家が倒れ、火事になろうと津波が来ようとお母さんは君を迎えに来るだろう、そうしたらお母さんはどうなる?・・・」
子供との間に沈黙の時間・・・何人かの目に涙。
するとある子が「僕逃げるもん!僕が逃げなっきゃお母さん死んでしまう!」
万感の思いがこもっていました。
僕が逃げる子だとお母さんが知っていれば、お母さんも逃げてくれる。
家族が信頼しあって「自分の命は自分で守る」、その事をしっかり指導されたそうです。
それが釜石の奇跡を起したのです。
「備えあれば憂いなし」と云う諺があります。
危険に対し未然に防ぐ対策、危険に遭遇した時いかに最小限に食い止めるか前もって準備する事は大切です。
でも備えをしたからこれで憂いが無くなったと思うのは危険です。
あらゆる危険に対し対応できる備えなんて有り得ません。
「自分の命は自分で守る」を教訓にしたいものです。